【桜の和歌】古今和歌集から学ぶ桜の楽しみ方12選

大島紬1

大島紬1
 桜とのつきあい方

大島紬テディベアの泥太郎と藍太郎が(@mizuhobear)紡ぐ古今和歌集の世界。

すべての日本人の恋人と言っても良い存在の「桜」

あなたは桜と、どういうつきあい方をしていますか。

もし春を満喫したいなら、上手な人の真似をすべきです。

古今和歌集には素敵な桜との逢瀬が紡がれており、参考になります。

 

この文芸集は桜が国民の恋人になるきっかけとなった記念すべき歌集です。

桜の和歌には一つの特徴があります。

それは散るまでの伏線をどう美しく張るか

この一点に絞られています。

言い換えると散り始めてからが本番です。

 

短い期間しか咲かない桜を古今和歌集の歌人たちは、

咲き始めから花の散るまで、どのように振舞ってきたのか見ていきましょう。

 

1.はじめて春を知った桜へ

大島紬

ことしより 春しりそむる さくら花 ちるといふ事は ならはざらなむ(49) 紀貫之

【現代語訳】今年はじめて春を知って花をつけた桜花よ、散るということは他の桜に見習わないでほしいものである。

 

「初めて春を知った桜」と言う表現が面白いですね。

咲き始めの桜を相手にこういう振る舞いをする貫之はシャレています。

まるで新入生に助言する生徒会長みたいですね。

 

実際に私も真似て桜に語りかけてみました!自分が俳優になった感じがしましたね!

春を演じるという視点でみると、この和歌はいいシナリオです。オススメします。面白いですよ!

 

 2.満開の桜をたたえる

大島紬

この世の中にまったく桜の花がなかったならば

世の中に たえてさくらの なかりせば 春の心は のどけからまし(53)ありはらのなりひらそん

【現代語訳】この世の中にまったく桜の花がなかったならば、慌ただしく散ることもなく春はのどかであろうに。

 

美男子の代名詞、在原業平にかかると「恋なしの人生なんて考えられない!」言っているように聞こえます。

桜とは人にある感慨をもよおさせる花です。その艶麗な世外の場は散ったら消えてしまうからこそ悩ましい。

見事に咲き誇った桜をたたえましょう。

 

3.桜より薄情な男

大島紬

あだなりと なにこそたてれ 桜花 年にまれなる 人もまちけり(62) よみ人しらず

【現代語訳】桜の花ははかなく散るので薄情であるとの評判があるが、その花でも一年に何度も来られないあなたのおいでを待っていたのよ!

 

これは女性が詠った和歌です。言い換えると「桜待たせる良い男」という歌です。桜と自分を重ね合わせております。

待たせる男って何をもってるんでしょうか。甲斐性がない私は不思議に思います。

たぶん、その人しか感じない熱のようなものでしょう。冷めると散るのは速いです。

 

4.「折り取ってしまえ」と「散るまで待とう」あなたはどっち?

大島紬

ちりぬれば こかれどしるし なき物を けふこそ桜 をらばをりてめ(64) よみ人しらず

【現代語訳】散ってしまったならば、いくら恋い慕ってもかいないのであるから、今日こそは桜の花を折るならば折ってしまおう。

 

「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」みたいな強引さを感じさせます。

この歌は桜を女性に見立て、意を決して告白する場面にも見えてきます。乱暴な表現の気もしますが、

桜の下での告白と捉えると絵になりますね。

 

をりとらば をしげにもあるか 桜花 いざやどかりて ちるまでは見む(65) よみ人しらず

【現代語訳】桜の花は折りとるならば、惜しそうにも思われることである。ここで宿を借りて散るまでながめよう。

 

「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」を想起させます。時間的、金銭的余裕を感じます。

「宿を借りて散るまで見る」と言う発想が殿様的と申しますか、杯を傾けながら桜をたたえる歌を詠む様を想像してしまいます。文雅の極みですね。

個人的に桜の下には赤い杯が似合うと思います。紙コップじゃ風情がない。我々も桜に見られてる。花見の際は少しは見栄を張りましょう。

 

5.桜を春の形見にする

大島紬

さくらいろに 衣はふかく そめてきむ 花のちりなむ のちのかたみに(66) きのありとも

【現代語訳】濃いさくら色に着物をば染めて着よう。やがて桜の花が散ってしまうであろうが、その後の思い出のよすがとなるように。

 

梅は袖に香りを、桜は桃色に染めて残す願望があるようです。美しさを留めておきたい気持ちが表現されております。

写真より、混じり気のない印象が残り思い出の頼りになるのではないでしょうか。

 

6.潔さを愛でる

大島紬

まてといふに ちらでしとまる 物ならば なにを桜に 思ひまさまし(70)よみ人しらず

【現代語訳】もし、散るのを待てというと、散らないでそのままとまる物であるならば、いったい何を桜以上に思うものがあろうか。

 

言って甲斐ないですが、満開の桜に「散るのを待て」と制止する見立ては面白いです。

つじつまが合わないですが、とどめる事を振り切って散る桜をたたえています。

なぜ散るのをためらわないのか不思議です。

普通こうはいかない。儚さより、強さを感じてしまう。

 

のこりなく ちるぞめでたき 桜花 ありて世の中 はてのうければ(71)よみ人しらず

【現代語訳】桜の花は、綺麗さっぱり散ってしまうのが結構なのである。世の中というものはいつまでもあると、その果ては嫌なものになってしまうのであるから。

 

絶頂で身を引くって、なかなかできない。どうしてもしがみついてしまう。

思い残すことなく去れない。幾ばくかの後悔があるのが普通なのだ。

私は桜のように美しく去れない。

 

7.花びらを雪に見立てる

大島紬

桜ちる 花の所は 春ながら 雪ぞふりつつ きえがてにする(75) 承均そうく法師

【現代語訳】桜の花の散っている所は、春でありながら雪がちらちらと降りながら、しかも消えがたいようである。

 

「春でありながら雪が降り、しかも消えがたい」お洒落なたとえ方です。

萎れないで散るのが、素晴らしい。能動的です。前のめりです。

「男は死んでも、さくら色」と言われる所以です。

 

8.花を散らす風を恨む

大島紬

花ちらす 風のやどりは たれかしる 我にをしへよ 行きてうらみむ(76) 素性そせい法師

【現代語訳】この美しい桜の花を吹き散らす風の居どころを誰か知っているのか。もし誰か知っているなら私に教えてくれよ。行って恨んでこよう。

 

「風のやどり」と言う言葉が好きです。実体のないものに形を与えてる。

「桜との逢瀬を邪魔する風」と言う見方も参考にしたいです。

 

春風は 花のあたりを よぎてふけ 心づからや うつろふと見む(85) 藤原ふじわらのよしかぜ

【現代語訳】春風は花の咲いているあたりをよけて吹いてくれよ。桜の花は自分の意志で散りがたになるのか、見定めようと思うから。

 

「風を恨んでも仕方ないから、せめてよけて吹いてほしい」

作者の藤原好風は読んで字の如く風が好きなんでしょうか。

 

桜の花に対する好風の優しさを感じます。

 

いわゆる「花に嵐」ですが、風を恨むかよけて吹いてくれと懇願するかの態度の違いが面白いです。

 

9.心変わりを嘆く

大島紬

はなの木も 今はほりうゑじ 春たてば うつろふ色に 人ならひけり(92) 素性法師

【現代語訳】花の咲く木もこれからはもう掘って来て植えまい。春になると、いつでも花の色が移り変わっていくが、その移り変わっていく色に人が見習うから。

 

梅の香りを嗅ぐと、待ってもこない恋人を思い出すから、もう梅の木は植えないと言う歌がありました。

こちらの場合は心変わりを嘆いています。自然環境が及ぼす人心への影響は無視できません。

 

10.あなたは春を恨むことができるだろうか

大島紬

さく花は 千くさながらに あだなれど たれかははるを うらみはてたる(101) 藤原ふじわらのおきかぜ

【現代語訳】美しく咲く花は種類も多く、どれもこれも皆はかなく移り気なものであるが、それでも、いったい誰がそんな春を恨むだろうか。

 

「おもしろうてやがて悲しき◯◯」と言う句がありましたが、お祭りが終わり、祭りを恨む人はいません。

名残惜しさを禁じえないと言う心持ちを見事に歌い上げております。

 

ちる花を なにかうらみむ 世の中に 我が身もともに あらむ物かは(112)よみ人しらず

【現代語訳】はかなく散る花をどうして恨むことができようか、この世の中に私自身だって、いつまでもいられはしないのであるから。

 

この歌には永遠に変わらないものは何もないと言う諸行無常の響きがあります。

 

11.心変わりを人に悟られたくない

大島紬

花見れば 心さへにぞ うつりける いろにはいでじ 人もこそしれ(104) 凡河内おほしかふちの躬恒みつね

【現代語訳】色あせて散りがたになった花を見ていると、私の心までもついに変わってしまったよ。しかし顔色には出すまい。私の移り気を人が知ってしまうから。

 

花に心中の思いを述べた歌ですが、花を異性に見立ててます。移り気な気持ちは、いかんともしがたいですが感情に溺れることなく

理性を必死に働かせております。余談ですが以前、思ってる事がすぐ顔色に出るから損してると指摘された事があります。

マイナスの感情は知られて良い事はありません。しっかり押さえつけましょう。

 

12.さよならだけが人生だ

大島紬

やどりして 春の山辺に ねたる夜は 夢の内にも 花ぞちりける(117)よみ人しらず

【現代語訳】宿をとって、春の山のほとりに泊まった夜は、夢の中でまでも、花が散っていたことよ。

 

夢の中で桜との逢瀬を重ねていると言う幻想的な歌です。虚実入り混じって、とても素敵です。

 

 

まとめ

 

12の逢瀬を見てきましたが、桜が国民の恋人になって当然という感じがします。

どの和歌も散り際を美しくするために、初めから用意周到に伏線を引いています。

 

 

古今和歌集の歌人を参考に桜との逢瀬を楽しんでください。

 

参考: 久曾神昇『古今和歌集』(講談社学術文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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