【春の風と和歌】古今和歌集に学ぶ春風の表現5選

大島紬

【春風鑑賞のツボ】風を人に見立てる

大島紬テディベアの泥太郎と藍太郎(@mizuhobear)が紡ぐ古今和歌集の世界 。

古今集に出てくる歌人たちは春の風を和歌でどのように表現してきたのでしょうか?

風は新たな季節を運んできます。昔の人は目に見えない春の風を人に見立てることで、

季節を描写してきました。

春風を使者にしたり、悪役にしたり、演出家に見立てる事で

さまざまな感情をあらわす事ができるようになります。

春風を”鑑賞”する事ができれば、春をもっと楽しめますよ。

1.春の到来を告げる風

大島紬

袖ひぢて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらん(2)紀貫之

【現代語訳】暑い夏の頃、知らず知らず袖が濡れながら、手にすくい上げたりした水が、寒い冬のあいだ凍っていたのを、

立春の暖かい風が解かしているのであろうか。

冬のあいだ凍って閉ざされていた氷を、立春の風が溶かす

冬から春の季節の変化を氷から風に置き換え、

春が来た喜びを見事に表現しています。

春風を『氷を溶かす風』と言い換えて仲直りに使えそうですね!

立春を仲直りの機会に使うって幸先が良さそうで素敵だと思います。

例:春風が君とのわだかまりを溶かす

2.春風を使者にする

花のかを 風のたよりに たぐへてぞ 鶯さそふ しるべにはやる(13)きのとものり

【現代語訳】咲き匂う梅の香を、風という使者に添えて、鶯を誘い出す道案内として、遣わすことである。

「梅にうぐいす」という早春の取り合わせを下敷きにしていますが、

梅の香りを風の使いに添えてうぐいすを招くという趣向にうっとりしますね。

参考にすべきは『風を使者』とみる視点ですね。

あなたは「風のたより」から何を受け取っていますか?

2-1.春の風から香りのたよりを受け取る

大島紬

霞立つ 春の山べは とほけれど 吹きくる風は 花のかぞする(103)ありはらのもとかた

【現代語訳】霞の立ち込めている春の山々は、遠くて花も見えないけれども、

そちらから吹いてくる風は花の香りがすることよ。

こちらの歌は風から香りを受け取った側ですね。

風と香りは共に姿かたちが見えないからこそ、

風に香りを乗せて運ぶと言う発想を持つことが大事です。

合わさることで、より風流さが増します。

3.悪役を演じる風

大島紬

花ちらす 風のやどりは たれかしる 我にをしへよ 行きてうらみむ(76)せい法師

【現代語訳】この美しい桜の花を吹き散らす風の居どころをだれか知っているのか。

もしだれか知っているなら私に教えてくれよ、行って恨んでこよう。

花を散らす風が悪役になっております。

風をうらむ事で桜を惜しんでいる様子が伝わってきます。

『風のやどり』って面白い表現ですね。

すがた形がないのに、誰も居所がわかるはずもありません。

「透明人間の住処すみかを教えてくれ!抗議してこよう!」と言ってるのと変わないですね。

やり場のない苛立ちをうまく言い表しています。

3-1.春風に注文をつける

大島紬

春風は 花のあたりを よぎてふけ 心づからや うつろふと見む(85)ふじはらのよしかぜ

【現代語訳】春風は花の咲いているあたりをよけて吹いてくれよ。

桜の花は自分の意志で散りがたになるのか、見さだめようと思うから。

満開になると不思議と風が吹きやすくなります。

花に嵐とはよく言ったものです。

春を告げたり、香りを運んだりしていた風がここでは邪魔者になっています。

姿形がない風に注文をつける趣向が面白いです。

4.風より早い移り気な心

大島紬

さくら花 くちりぬとも おもほえず 人の心ぞ 風も吹きあへぬ(83)紀貫之

【現代語訳】桜の花はそれほど速く散ってしまうとも思われない。

人の心こそ風も吹きおおせないほど早く変わるものであるよ。

人の移り気は風より激しいです。

心情を風に託して嘆いています。

5.桜吹雪に風のなごりを感じる

桜

さくら花 ちりぬる風の なごりには 水なきそらに 浪ぞたちける (89)紀貫之

【現代語訳】桜花が散ってしまった風の名残としては、水のない空になごりの波が

立っていることであるよ。

『風のやどり』がありましたが、『風のなごり』も素敵な言葉ですね。

過ぎゆく春を感じて、しみじみさせます。

風に吹き散らされて空一面に舞い散っている桜花をに見立てています。

桜にとって風は厄介者ですが、美しく舞い散るには風の演出が不可欠です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

  • 春の到来を告げる
  • 梅の香りを運ぶ使者
  • 桜を散らす悪役
  • 桜吹雪の演出家

春の風を様々な役割に見立てて春の暮らしを楽しんでくださいね。

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