【梅の和歌】古今和歌集から学ぶ梅の香りの表現10選

大島紬テディベア

梅の香りの文化を学ぶ

古今和歌集

大島紬テディベアの泥太郎と藍太郎(@mizuhobear)が、大和撫子に贈る古今和歌集の世界。

春の訪れを告げる梅の花。なかでも魅力のひとつと言える香り

あなたは梅の香りを「良いにおい」だけで済ませてませんか。

現代人は意外と香りを言葉でふくらまし、表現する術に欠けています。

古今和歌集には実に魅力的な梅の香りの楽しみ方が示されております。

一言でいうと、恋と絡めています。

「梅の香り」から「香を焚きしめた異性」を想い、

「恋」と関連させる事で、

実り豊かな世界観を紡いでいます。

梅の芳香の見方を多くして、もっと春の引き出しを増やしませんか。

そこで今回は古今和歌集の歌人たちが、

どのように梅の香りの楽しんだのか

10の項目に分けて紹介します。

うまく暮らしの中に取り入れて

早春を自分のものにしましょう。 

1.香りをまとう

梅の香り

折りつれば 袖こそにほへ 梅の花 有りやここに うぐいすのなく(32) よみ人知らず

【現代語訳】梅の花を折り取ったので袖がこんなに香っている。

梅の花が咲いていると思って、ここにうぐいすが鳴いているよ。

「袖こそにほへ梅の花」に象徴されるように、

当時は香りをまとう文化が盛んで、

梅の芳香を袖の移り香に見立てています。

うぐいすが人を梅の木と勘違いしている

趣向がお茶目です。

この和歌を作った歌人は香りを着こなしていますね。

ゴキゲンな春を過ごしているのがわかる。

うぐいすの鳴き声を聞いた時、この歌を思い出して真似しましょう。

「やれやれ、どうやら僕を梅と勘違いしているようだ。」

きっと素敵な春の一場面になるはず。

2.香りが呼び起こす思い出

梅の香り

色よりも かこそあはれと おもほゆれ たが袖触れし やどの梅もぞ(33)よみ人しらず

【現代語訳】すぐれた色より香りこそ趣深い

この宿の梅はいったい誰の移り香なのだろう。

宿の梅に人の気配を感じさせる趣向です。

香りが雰囲気をかもし、

高貴な人物像が立ち昇ってきます。

この和歌に歌われている人物は男性でしょうか?それとも女性?

次の歌から男性とわかります。

(梅の芳香を人の移り香に見立てる。)

やどちかく 梅の花うゑじ あぢきなく まつ人のかに あやまたれけり(34)よみ人しらず

【現代語訳】宿近くに梅の花は植えないわ! 待ってもこないあの人の香りと間違えるから!

33と34の歌は同じ宿の梅でも違う視点から歌うことで、

名うての色男が浮かび上がる趣向になっております。

香りが記憶を呼び覚ますんですね。

なかなか振り向いてくれない恋の苦しさを歌い上げています。

良い男には待ってる女性がたくさんいるんでしょうね。

次の歌はその色男自身が歌っているように見えてきます。

(梅の香を恋の苦しさに転化している)

3.香り振りまくいい男

大島紬

梅の花 たちよるばかり ありしより 人のとがむる かにぞしみぬる(35)よみ人しらず

【現代語訳】梅の花のもとに立ち寄ったばっかりに、誰の移り香なのかと

とがめられてしまったよ。

「人がとがめる、梅の香り」

香りは相手にいろいろな感情を抱かせます。

恋人は別の女性の存在を嗅ぎ取ったのでしょう。

このように、モテる男性は香りと共に誤解も振りまいています。

それが、いろんなドラマを生むのですが。(梅の香に女性の影を感じ取る)

4.香りで恋愛を成就させる

テディベア

よそにのみ あはれとぞ見し 梅の花 あかぬいろかは 折りてなりけり(37)せい法師

【現代語訳】遠巻きから素晴らしいと見ていた梅の花の見飽きない色や香りは

折り取ってさらに良く理解できたよ!

男性が女性を喜ばすために作ったものでしょう。

梅の花や香りを、女性に置き換える趣向になっております。

「折りてなりけり」は「交際してわかった」と言うことでしょうね。

距離感が縮まって、関係性が深くなったことがわかります。

(異性との距離感を縮める)

大事なことなので、繰り返します。

あなたの大切な人を喜ばすために参考にしましょう。

5.香りを手紙に添える

梅の手紙

君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をもかをも しる人ぞしる(38) 紀友則

【現代語訳】あなた以外の誰にいったい見せましょうか。この梅の花の色も香も

わかる人だけがわかる。

これも女性と価値観を分かち合って、かかわりを深めようとしています。

言葉にできない梅の素晴らしさを、

あなたと共に分かち合いたいと

梅の枝に結ばれた手紙を贈られたら、

嬉しいでしょうね。

「しる人ぞしる」の部分に特別感と熱を感じさせます。

男性が女性の心の扉を必死で叩いている。

(同じ価値観を分かち合う)

6.闇の中で、輝く「香りの描写」

春の夜の梅の花

春の夜の やみはあやなし 梅の花 色こそ見えね かやはかくるる(41)みつね

【現代語訳】春の夜の闇も梅の花の前には形無しであるよ

花の色は見えないが、香りを隠すことはできないから。

春の夜の闇に漂う梅の香りを着物に香をたきしめた女性に見立てています。

逢瀬を重ねた歌だと思われます。

春の夜の梅の香りを女性にたとえる上品さが光る一首です。

「暗闇も君も魅力を隠せないさ」

(そこはかとなく漂う魅力)

7.郷愁を誘う香り

梅の香り

人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の かににほひける(42)紀貫之

【現代語訳】心の通じあう人のいない故郷でも梅の花だけは昔とかわらぬ香りで私を迎えてくれる。

「香りが私を迎えてくれる」と言う着想が面白いですね。

恋だけではなく、懐かしさとからめるのも暮らしに活かしやすいと思います。

オススメです。

(思い出の香り)

8.香りをかたみにする

古今和歌集

梅がかを そでにうつして とどめてば 春はすぐとも かたみならまし(46)よみ人知らず

【現代語訳】梅の花の芳香を、袖に移し留めておいたならば、たとえ春は過ぎ去っても、

梅の花のかたみとなるであろうものを

梅の花が忘れられないほど、深く恋い慕う様をうまく読んでいます。

香りを袖に移してかたみにするという趣向を凝らしております。

いつまでも自分の近くにおいて置きたいけど、それも叶わない。

刹那的ですね。(香りをかたみにする)

楽しんだ後は、「惜しむ」態度をあらわすることは、

梅または過ぎ行く季節に対しての礼儀です。

9.忘れたい過去

古今和歌集

ちると見て あるべきものを 梅の花 うたてにほひの そでにとまれる(47)素性法師

【現代語訳】散って終わってしまえばいいのに。梅の花は香りがいつまでも袖に

移り香となって残っているよ。

「そでにとまれる」は自分の意志とは関係なく、

こびりついてしまった感じですね。

「かたみ」に残す行為とは真逆です。

別れた恋人とも受け取れます。

(忘れたい過去)

同じ梅の香りでも、恋人と絆を深めるのに使われることもあれば、

忘れたい思い出にも使う事も出来る。

香りをめぐる視点の幅の広さが面白いです。

10.思い出の香り

大島紬

ちりぬとも かをだにのこせ 梅の花 こひしき時の おもひでにせむ(48)よみ人しらず

【現代語訳】たとえ散ってしまおうとも、せめて香りだけでものこしてくれ。

恋しい時の思い出にしようと思うので。

香りという目に見えなければ手にも取れない。

しかし、記憶にはしっかり残る感覚

見事な惜別の和歌だと思います。

古今和歌集の歌人達は香りをで、

香りに心遊ばせてます。

ぜひ「ちりぬとも かをだにのこせ 梅の花」と

梅に向かってつぶやいて見ましょう。

梅と恋を演じるように。

ほんの少し素敵なあなたになれることを保証します。

まとめ

いかがだったでしょうか。

古今和歌集の歌人達は梅の芳香を恋とからめる事で豊穣な世界を紡いできました。

梅の香を相手にどう振る舞えば魅力的に見えるのか参考になれば幸いです。

参考: 久曾神昇『古今和歌集』(講談社学術文庫)

2 COMMENTS

こはる

では、花を折るという行為についてはどのような意味が秘められているのでしょうか

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