【秋風と和歌】古今和歌集に学ぶ秋の風の楽しみ方8選

大島紬

【秋風鑑賞のツボ】

大島紬

大島紬テディベアの泥太郎と藍太郎(@mizuhobear)が紡ぐ古今和歌集の世界 。

あなたは秋風を『鑑賞』できますか。

私は「過ごしやすい季節が来た」で済ませていました。

 

年齢を重ねるにしたがって、もっと季節を味わい尽くしたいと思い、

古今和歌集をひもいてみると、そこには秋風を楽しんでいる

歌人達の姿がありました。

 

そこで今回は、古今和歌集から秋の風を詠んだ8首を厳選し、

秋風鑑賞のツボを学びたいと思います。

秋を自分のものにしましょう。

 

1.ほほに感じる秋の気配

テディベア

あききぬと めにはさやかに 見えねども 風のおとにぞ おどろかれぬる(169)ふぢはらの敏行としゆきそん

【現代語訳】目前の景色を見ているだけでは、秋が来たとはっきりわからないけれども、

吹く風の音を聞くと、さすがに秋であると感じられることである。

 

立秋というとまだ30度以上の真夏日ですが、刺すような日差しの中で不意に吹く頬を撫でる爽やかな風に

秋が来たことに気づいた繊細な歌です。

 

ちなみに立春の風は「氷を溶かす風」として親しまれ、

春が来た喜びを表現している。

 

関連記事:【春風を人に見立てる】古今和歌集に学ぶ春の風9選

2.涼しさを秋が立ち上がると言い換える

大島紬

河風かわかぜの すずしくもあるか うちよする なみとともにや 秋は立つらむ(170)紀貫之

【現代語訳】さても河風の涼しいことよ。今日は立秋であるが、

波といっしょに秋は立っているのであろうか。

 

立秋の日に読んだ歌。

浪が立つを秋が立つとかけているレトリックより、

涼しさを秋が立ち上がるととらえる発想が面白いです。

 

立秋の日(8月7日頃)は、涼しさをさがして秋のきざしに仕立て上げましょう。

 

3.ころもすそを吹き返す風に秋の訪れを感じる

大島紬

わがせこが 衣のすそを 吹き返し うらめづらしき 秋のはつ風(171)よみ人しらず

【現代語訳】(私の夫の着物のすそを風が吹き返し裏を見せるが)

まことにうら珍しい秋の初風が吹きはじめたことよ。

 

視覚的に秋の訪れを表現した歌。

何を風が吹き返したかに、個性が現れる。

現代だとスカートに置き換えやすいですが、

髪の方が素敵ですね。

 

個人的には衣の裾より木の葉の吹き返しの方が実感があります。

桜の葉は9月頃に落葉するので、

葉が散り始めると秋の訪れを感じます。

 

夏と秋が交差する時期。

 

4.稲葉をそよぐ風に季節の移り変わりの速さを見る

大島紬

きのふこそ さなへとりしか いつのまに いなばそよぎて 秋風の吹く(172)よみ人しらず

【現代語訳】ほんのきのう早苗を取って植えたばかりであるのに、

一体いつのまに秋になって、稲葉がそよいで秋風が吹くのであろうか。

 

この前、田植えをしたばかりなのに、もう金色の稲穂が波打っている…

時の流れの速さを詠んでいます。

早苗から立派な稲に育った現実を前に、

秋風が「あなたは一体何をしてきたの?」とささやいている

 

5.風より他には誰も訪れる人がいない

大島紬

ひぐらしの なく山里のゆふぐれは 風よりほかに とふ人もなし(205)よみ人しらず

【現代語訳】ひぐらし蝉の鳴く山里は、夕暮れ時になると、

風よりほかには訪れる人もなく、寂しいことである。

 

「秋風が吹く」と云う言い方がありますが、男女の関係が冷える様を意味します。

「飽き」にかける時もあります。

風より他に訪ねる人もいないとは、わびしい

 

ここでは誰も訪れる人がいないことをなげいていますが、

むしろ秋風がいざなう寂しさを味わうのも風雅なり。

 

6.風が運ぶ恋の香り

匂い立つような

女郎花をみなへし ふきすぎてくる 秋風は めには見えねど かこそしるけれ(234)おほし河内かふちのつね

【現代語訳】おみなえしの咲いているあたりを吹きすぎてくる秋風は、

目には見えないけれども、香りが高いのではっきりとわかる。

 

ここでの風は香りを運ぶ役目になっている。

女郎花の香りを女性の衣にきしめた香りに置き換えることで,

それとなく恋の歌になっています。

 

余談ですが、躬恒は春にも香りに関して以下の歌を詠んでいます。

 

春の夜の やみはあやなし 梅の花 色こそ見えね かやはかくるる(41)

【現代語訳】春の夜の闇も梅の花の前には形無しであるよ

花の色は見えないが、香りを隠すことはできないから。

 

「春の夜の梅の花」「女郎花の香りを運ぶ目に見えない秋風」

梅と女郎花を女性に見立て、視覚を封印して嗅覚を強調することで

女性の魅力を浮かび上がらせる趣向は見事です。

 

この二つの歌で躬恒のセンスの良さがわかる。

 

    関連記事:【梅の芳香は恋の香り】古今和歌集から学ぶ梅の鑑賞10選

 

7.もみじを吹き散らす風を恨む

大島紬

こひしくば 見てもしのばむ もみぢばを 吹きなちらしそ 山おろしのかぜ(285)よみ人しらず

【現代語訳】紅葉の盛りが恋しくなった時には、見てしのぼうと思う。

であるから、この散り敷いたもみじの葉を、吹きちらしてくれるな。

山から吹きおろす風よ。

 

秋の盛りを楽しんでいる所を、邪魔する風と言う構図です。

秋のもみじに対して、春は桜を散らす風を恨む下の歌があります。

 

花ちらす 風のやどりは たれかしる 我にをしへよ 行きてうらみむ(76) 素性そせい法師

【現代語訳】この美しい桜の花を吹き散らす風の居どころを誰か知っているのか。

もし誰か知っているなら私に教えてくれよ。行って恨んでこよう。

 

風を悪役にすることで過ぎ行く季節を惜しむ趣向をとっています。

 

関連記事:古今和歌集から学ぶ桜の楽しみ方12選

 

8.紅葉こうように染まる秋色の風

大島紬

吹く風の 色のちくさに 見えつるは 秋のこのはの ちればなりけり(290)よみ人しらず

【現代語訳】吹く風がいろいろの色に見えたのは、

秋の木々の紅葉が風の中を飛び散っているからであったよ。

 

幻想的な歌です。

「秋のこのは」が散る様子を風に塗る絵の具にしている!

風に色をつけるという発想が面白い!

いや、「風を染める秋のと言い換えた方がいいのか。

 

この歌作った人、何者なんだろう?

まいりました。

 

まとめ.

今回は秋の風に焦点を当ててきました。

風は季節の演出家だと思います。

良い秋をお過ごしください。

 

 

 

 

 

 

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